行列にだまされる人が多ければマスマーケティングはまだ通用する

 日本マクドナルドホールディングスは2009年1月9日、2008年12月における既存店売上高は前年同月比2%増と、8カ月で前年を上回っていることを発表しました。既存店の客単価も前年同月比5.6%増。これは11月28日に関東で先行発売したハンバーガーの新商品「クォーターパウンダー・チーズ」「ダブルクォーターパウンダー・チーズ」が好調に推移した結果とのこと。

 

 日本マクドナルドはこのQUARTER POUNDERのプロモーションに、様々なマーケティング手法を使いました。

 

 まず、QUARTER POUNDERのリアルなティザーマーケティングを展開したこと。ティザー広告とは、少しずつ情報を解禁していきながら、消費者の興味をあおること。Web広告の世界では比較的多く、最近では2008年12月24日に企業名を明かした相模ゴム工業の「LOVE DISTANCE」の例があります。

 

 マクドナルドの場合はさすがというか、渋谷と表参道の二個所で企業名を隠してQUARTER POUNDERの実店舗を構えるというかなり費用をかけたリアルティザーマーケティング。

 

 以下のブログのように、海外のハンバーガーチェーンが進出してきたかのように書くブロガーが多く登場します。

 

http://ameblo.jp/pinksnow2007/entry-10159227206.html

 

 しかし、一方で海外のマクドナルドでは既に販売されており、以下のブログのように気付いた人もいます。

 

http://run2.exblog.jp/7663477/

 

 そして、先のネット上で話題になった大阪での販売スタート時の行列アルバイト、いわゆるサクラの活用です。人がたくさん並んでいれば、気になって並ぶもの。約1000人のアルバイトを使って行列を作ったわけです。

 

 こうしたマーケティング手法に対して批判的な意見が集まりましたが、よく展開されている手法の一つです。ネットマーケティングの世界でいえば、お金を払ってブログの記事を書いてもらう、ペイパーポスト(Pay Per Post)タイプのマーケティング手法と同じです。展開する企業側からすれば、一種のお祭りをお金で買うことでスタートダッシュさせたい思惑があります。

 

 こうした手法は確かに“やらせ”。ただ、批判する前に二つ考えてみたいことがあります。まず、商品自体に自信がなければ一時的な行列を生み出したとしても意味がないということ。先に話題を集めたH&Mではいまだに行列が消えません。QUATER POUNDERも商品自体に力がなければ、一瞬で人の波は消えるでしょう。マクドナルドは12月のスタートダッシュはとりあえず成功。1月以降の数字を見なければ本当の成功とは言えないかもしれません。

 

 もう一つは、いったい誰がこうした手法に対して怒っているのかということです。

 

 例えば、ネットマーケティングにおいてペイパーポストタイプの手法はやらせとして非難されがちです。ただ、これについては「ブログ」というメディア自体の信用性を下げてしまうからという明確な理由があります。やらせブログが横行してしまっては、ブログや掲示板などクチコミ情報を見て商品を買う際の参考にするなんて行為を皆がしなくなってしまいます。ブログというメディアを舞台にビジネスを展開する人にとってはこうした状況は是が非にも避けたいわけです。

 

 では、サクラの行列はどうでしょう。企業倫理としてサクラの活用はいかがなものかという非難でしょうが、いったい誰が損をするのでしょうか。行列を見て並んでしまい、おいしくないハンバーガーを食べさせられた消費者?ではおいしければ問題ない?そもそも行列を見て並んだ消費者の行動は?

 

 企業名を伏せたティザー広告の場合、そもそも面白そうでなければ人は継続的に見ませんし、集まりません。面白いと感じた消費者のみが気になり、そして楽しむ。企業名が明かされた瞬間、大半の人たちは「あーしてやられた!」と思っているのではないでしょうか。

 

 行列を見て並んでしまい、QUARTER POUNDERをまずいと感じてしまった人たちは日本マクドナルドの手法に反感を覚えて当然だと思いますが、それ以外の非難している人たちは「自分もいつかだまされるかも」と思っている人、つまり人だかりができていたらどうしても気になってしまう人たちなのかもしれません。こうした人たちがもし大半を占めるのであれば、まだ嗜好性の多様化時代はおとずれていない証拠。

 

 どれだけハンバーガー屋に行列ができていても、私はいまはソバが食べたいんだという流されない人がもし少ないのであれば、まだまだマスマーケティングが効く時代といえるのではないでしょうか。

One Comment

  • [...]  なぜグーグルがクチコミマーケティングを展開すると怒りの声が上がるのか。それは同社がペイパーポストを使ったマーケティングに否定的な見解を出しているためです(詳細はSEMリサーチの「Google、ペイパーポストのリンクに対する見解表明 – Paid Postsに「NO」」をご参照)。ペイパーポストはお金を払ってブログなどに記事を書いてもらうサービス。つまり、意図的にクチコミを発生させるマーケティング手法です。リアルな世界ではマクドナルドがクォーターパウンダー発売時に使ったさくら行列に当たります(関連記事)。こうしたマーケティング手法が蔓延すると、検索エンジンは「ユーザーが求めている情報に最適な回答を応える」というミッションを阻害されることになります。だからこそ、ペイパーポスト型のマーケティング自体がいいか悪いかは別として、ガイドラインに違反していると見解を出していたわけです。その見解を出した張本人がペイパーポスト型マーケティングを利用していたとなると、それは非難の声が上がるのは必至でしょう。 [...]

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