朝日新聞社、トムソン・ロイター・ジャパン、ソネット・メディア・ネットワークスの3社は2009年2月12日、アドネットワーク「ビジネスプレミアムネットワーク」を4月より開始すると発表しました。同ネットワークに参加を表明している媒体は「ロイター.co.jp」「asahi.com」「jiji.com」「ダイヤモンドオンライン」「AFPBB News」「プレジデントロイター」「東洋経済オンライン」「CNN.co.jp」。そうそうたる面々です。
(アドネットワーク?という方は用語解説「アドネットワーク」をどうぞ)
このアドネットワークの特徴は裕福で決裁権を持つビジネスパーソンをターゲットにしていること。意識しているのは明らかに日本経済新聞社の子会社である日経BP社が始めたアドネットワークです。メディアは読者でもなく広告主でもなく、隣のメディアを一番意識するとよく言われますが、まさにその状況。ヤフーやグーグルにネット上の覇権を押さえられているにも関わらず、既存メディア同士の仁義なき戦いが始まりました。
ここでメディアを軸としたアドネットワークの特徴を整理すべく、下の図をまとめてみました。

メディアを軸としたアドネットワークの勢力図
グラムメディアのアドネットワークにはカフェグローブやWoman.exciteもいますが、ここでは省略しています。(詳細はCNETの「女性向けアドネットワーク「Glam Media」、日本向けサービス開始」をご参照)グラムメディアに対しては日経BP社と小学館が出資。日経BP社には日経WOMANや日経ヘルスといった女性媒体がありますので、こうしたWebサイトをグラムメディアに預け、女性向け広告を取りに行こうととしているようです。
まず、新しく発表したビジネスプレミアムネットワークと日経BP社のアドネットワークから比べてみます。
ビジネスプレミアムネットワークに参加を表明している媒体はどれもビジネスパーソンなら誰でも知っている東洋経済にダイヤモンド、プレジデントといった経済誌、そして朝日新聞が名を連ねます。雑誌で言えば、日経BP社が発行する日経ビジネスの対抗誌が名を連ねた感があります。まさにオールドメディアの大連合と言えるでしょう。一方の日経BP社のアドネットワークには他のオールドメディアがいないため、インパクトにかけます。こうしたアドネットワークは広告主の印象も重要な要素ですから、先にアドネットワークを始めたとはいえ、影響は大きいでしょう。逆にアドネットワークの開始によってほかの対抗軸をまとめるのに一役買ってしまったのかもしれません。
ただ、一方でオールドメディアの知名度とインターネット上の存在感は別の話。ビジネスプレミアムネットワークのインプレッション数を見ると月間で1億程度。これはおそらくほとんどが朝日新聞のニュースサイト「asahi.com」の在庫でしょう。asahi.comはもちろんビジネスパーソンも見ていますが、一方で「どらく」をはじめ、生活情報も多いサイトです。ビジネスプレミアムネットワークは、オールドメディアのなかではPVを大きく稼ぐasahi.comと、あまりPVを稼げていないもののビジネスパーソンへの認知度が高い出版社を組み合わせて広告商品として見せている、実にうまい設計がなされたアドネットワークと言えるでしょう。
一方の日経BP社主導のアドネットワークには、「Amazon.co.jp」や「kakaku.com」「ECナビ」「coneco.net」といったインターネットの世界では抜群の知名度を持つECサイトや価格比較サイトが名を連ねます。一部報道で、ビジネスプレミアムネットワーク陣営が「メディアではないコミュニティやECサイトが入っている」点を指摘していましたが、人が集まるところがメディアになるという考え方からすると、十分な面々です。
また、ビジネスプレミアムネットワークが電通提唱の消費行動モデル「AISAS」~Attention(注意)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(購入)、Share(共有)~のなかで、最初の「A(注意)」「I(興味)」の部分を押さえているのに対し、日経BP主導のアドネットワークは「A(注意)」「I(興味)」に加えて、「S(検索)」「A(購入)」「S(共有)」の部分を押さえにかかっています。ビジネスプレミアムネットワークはあくまで新聞や雑誌が担っていた「A(注意)」「I(興味)」の役割にこだわり、日経BP社のアドネットワークはインターネットユーザーの行動に沿った形で役割を拡大しようとしているわけです。
こうして見ると、「オールドメディア連合」vs「新旧メディア連合」と言えるでしょう。
一方で、こうした新興アドネットワークと既存の主要なアドネットワークを比較した場合は以下のような感じになります。

既存のアドネットワークと新興アドネットワークの比較図
ある意味、オールドメディアは規模の勝負を諦めています。ヤフーやグーグルとけんかしても自分たちにとってその先に明るい未来はないと思っているのでしょう。ならば、雑誌と同様、読者属性を絞ったモデルで高い単価を維持できないものか。こう考えるのは至極当然な流れです。
ただ、オールドメディアは注意が必要です。いくらビジネスパーソンで年収が1000万円以上で部長以上が見ているアドネットワークだと連呼したところで、ヤフーが同等の属性を持つユーザーを行動ターゲティングをはじめとするターゲティング技術で絞り出せば、比較にならない広告在庫を作り出すでしょう。
また、既存のアドネットワークは様々なターゲティング技術を駆使した広告商品を用意しています。行動ターゲティング広告、エリアターゲティング広告、属性ターゲティング広告、またそれらを掛け合わせた商品も出ています。ビジネスプレミアムネットワークの広告配信を手がけるソネット・メディア・ネットワークスは行動ターゲティング広告をはじめ、様々なターゲティング広告も手がけていきたいとしていますが、この規模で絞り始めると、広告として商品化できない在庫数に陥る可能性が高いです。
いずれにせよ、オールドメディア同士が狭いパイをめぐって争いを繰り広げているのは、ヤフーやグーグルにとってはありがたいお話でしょう。ビジネスパーソンはasahi.comや日経ビジネスオンラインも見ているでしょうが、それ以上にYahoo! JAPANやGoogleを活用しているのですから。
オールドメディアの戦い、しばし注目しましょう。






[...] 一方の朝日新聞社は日本経済新聞社と読売新聞社と手を組み、各紙のニュースや社説を読み比べられる「あらたにす」を2008年1月31日に開始。広告サイドでは「オールドメディアの仁義なき戦い始まる」で触れたようにロイター・ジャパンやほかの出版社と手を結ぶなど、ある意味、新聞や雑誌といった既存メディアを中心に手を組んできました。 [...]