改正薬事法による一般医薬品のネット販売規制。ヤフーと楽天が実施している署名件数は50万件を突破し、厚生労働省の省令公布にもかかわらず、依然として反対運動が続いています。
一般医薬品の67%が規制を受けるとされているネット販売規制。反対運動は舛添要一厚労相の耳に入り、医薬品の販売方法を再度議論するため「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を設置することになりました。2月24日午前に第1回会合が開かれる予定です。
「対面販売の原則」を満たさないネット販売を規制する厚生労働省の執着はすさまじいものです。「対面」にこだわる割に、理屈の通らない部分、時代にそぐわない部分も多く、個人的に今回の騒ぎは議論が足りなかったことによる混乱と思っています。厚生労働省もここまで反対運動が大きくなるとは想定していなかったのではないでしょうか。
改正薬事法ではネットだけでなく、電話やFAXといった通信販売全体に規制がかかります。あまり注目を浴びていませんが、いわゆる漢方に近い伝統薬を通信販売している企業にとって死活問題といえます。彼らは急遽「伝統薬連絡協議会」を立ち上げ、規制に反対の声を上げていますが、新聞や雑誌などのメディア経由でしか動向を伝え聞くことはありません。一部報道によれば「ネット販売規制だけだと思って対応に出遅れた」という声も掲載されていました。
ヤフーや楽天はインターネット上でオークション事業やECモールなどの事業を展開する企業ですが、一方で圧倒的な集客力をほこるメディアの側面を持ちます。連日、トップページの目立つ部分などで署名運動を展開し、自社の利権を守ろうとしています。こうした行為は別段非難されるべきことではありませんが、再販制度維持の記事を書き続ける新聞や雑誌とやっていることはなんら変わりがありません。
怖いのは彼ら自身がメディアとしての意識を持ちつつ、その側面を見せずに影響力を行使し続けること。極端なことをいえば、事業を阻害する要因の排除を目的としていれば「インターネット規制をとなえる議員への反対の声を上げよう」なんてことも可能になるわけです。
お隣、韓国では一昨年、公正取引委員会がポータルサイトの独占地位乱用について調査をはじめました。そして昨年、ついに3年以上も7割前後のシェアを握っているNAVERをポータルサイトでは初めて「市場支配的事業者」に指定しました(ウェブ業界の市場支配とは・韓国最大ポータルVS公取委の結末)。いかにも韓国らしい規制の動きですが、これは影響力の大きいポータルサイトに規制のメスを入れようとしたもの。対岸の火事ではないかもしれません。
インターネットメディアの力が増大するにつれ、政府や官僚は今後もさまざまな方向から規制をかけてくるでしょう。今回の薬事法改正は氷山の一角かもしれないのです。
集客力のある場を使って数十万人規模の署名を一気に集めるそのメディアとしての力は逆に規制論者の火に油を注ぐ、諸刃の剣。改正薬事法が修正され、「彼らは支配的地位を利用して国民の意識に多大な影響を与えられる」といった論調が広がれば、「規制強化」という思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。
利益を追求する事業体とメディアを兼ね備えるヤフーや楽天は、その立場をもっと意識すべきでしょう。そして、利益追求事業体としてメッセージを発するならば、ほかのメディアで意見広告を掲載するなど、自社のメディアという側面から切り離した形で消費者に問うべきだと思っています。






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