米グーグルが一転、行動ターゲティング広告開始へ

 米グーグルがついに行動ターゲティング広告の世界へ足を踏み出しました。同社は少なくとも2007年夏の時点で行動ターゲティング広告には否定的でしたが、ここにきて方針を大きく転換したようです。

 Tech Crunchの記事「Google、閲覧履歴に基づくターゲティング広告を導入。利用者自身で『好み』の設定も可能」によれば、米グーグルの行動ターゲティング広告の概要は以下の通り。

・ユーザーがAdSense広告を表示しているページを閲覧した際にユーザーを識別させるためのCookieを発行

・ページ閲覧履歴を基に約600のジャンルカテゴリーにユーザーの好みを分類

・AdSense広告を表示するページにアクセスした際に、嗜好性を基に広告を配信

グーグルが分類した自分の趣味思考のジャンルを追加したり削除したりできる「Ad Preferences Manager」

グーグルが分類した自分の趣味思考のジャンルを追加したり削除したりできる「Ad Preferences Manager」

 ここまでは通常の行動ターゲティング広告となんら変わらないですが、面白いのは「Ad Preferences Manager」。ここではユーザー自身が自分の趣味思考がどのようなカテゴリーに分類されているのかを確認できるほか、自ら好みを追加したり削除したりもできます。もちろん、履歴をベースとした広告配信をすべて断る機能、いわゆるオプトアウトもここから可能です。

 行動ターゲティング機能を持ったAdSense広告。これは日本でヤフーとオーバーチュアが独自に開発して導入した「コンテンツマッチ」の後継版、「インタレストマッチ」にグーグルが追いついたともいえます。

 さて、グーグルはなぜここにきて否定的だった行動ターゲティング広告を始めたのでしょうか。そもそも、否定的の根拠とされたグーグルの過去のコメントを振り返ってみましょう。

 ロイターの報道によれば、米グーグルの広告製品管理担当副社長のスーザン・ウォイッキ氏は2007年7月31日の時点で、「業界では、広告主のためにユーザーのオンラインでの各種の行動を1つのプロフィールにまとめる動きが盛んだが、Googleはそうした競争には加わりたくない」との考えを明らかにしています。また、次のようにも述べています。

「われわれは、ユーザーが検索を実行するその時点での情報こそが、彼らが何を探しているかを最も端的に示していると考えている。われわれは、どの情報が使われ、どの情報が使われていないかを常に慎重に観察するようにしている」

「われわれは従来の行動ターゲティングに対しては非常に慎重だ。われわれは何も保存せず、何も記憶していない。すべて、その検索セッションの中でのみ起こるようになっている」

 こうした発言を素直に捉えれば、行動ターゲティング広告にかなり慎重で、過去の履歴を用いたターゲティングには否定的な姿勢に映ります。ただ、見方を変えれば、2007年7月というタイミングは同社による米ダブルクリックの買収を表明してから3カ月後。個人情報侵害や独占禁止法に抵触する恐れがあるとして欧州委員会(EC:European Commission)と米連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)が調査が入るなど、ナーバスになっていた時期でした。結局、2007年12月にFTCが買収を承認し、ECもそれに追随したことから、米グーグルは2008年3月11日に買収を完了しています。

 こうした懸念材料が払拭され、呪縛から解き放たれたグーグルが単にずっと検討していた行動ターゲティング広告を始めただけ。そういう見方もできそうです。

 いずれにせよ、グーグルが行動ターゲティング広告を始めたことは広告市場に大きなインパクトを与えそうです。自ら趣味思考を追加したり削除したりできる機能は、1か0かのオプトイン、オプトアウトしかない現在の行動ターゲティング広告の精度を上げるのに新たな選択肢を生みそうですし、行動ターゲティング広告で完全にヤフーに独走されている日本市場で巻き返せるのかもかも気になります。

 追記:グーグル日本法人でも公式ブログで発表されていました(「新しい広告のプログラムのテストについて」)。これによると、今回のテスト配信はAdsenseパートナーサイトとYouTubeで行うこと、Ad Preferences Managerが近々日本語化されることについて触れています。また、AdSense日本語公式ブログの「AdWords で『興味 / 関心に基づく広告』が利用可能になります」によれば、AdSenseを掲載しているサイト運営者は4月9日までにプライバシーポリシーの変更が必要になるとのこと。行動ターゲティング広告の配信がデフォルト設定になる予定で、これはプライバシーポリシーの変更を忘れた大量のサイトと消費者団体の新たな衝突の火種になりそうな予感がします。

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