ほかのメディアから学べること

 日本テレビが3月15日の日中、関東ローカルで「行列のできる芸能人通販王決定戦」と題した番組を放映していました。これは同局が深夜に放送しているテレビ通販番組「ポシュレ」と行列のできる法律相談所」のコラボ企画。司会は島田紳助です。

 番組の内容はいたって単純。芸能人がポシュレの番組内に登場して商品をプレゼンし、売り上げ金額を競うというもの。プレゼンターと商品は以下の通り。

■若槻千夏=こだわりロールケーキセット(3種類のロールケーキセット)=5280円

■FUJIWARA=バストパッドグラビアート(ブラジャーに装着するバストアップ用パッド)=5040円

■ゴスペラーズ=PONカレーセット(ゴスペラーズの黒沢氏が作ったレトルトカレーセット)=3980円

■東MAX=ヒーレスウォーカー(靴の底面に傾斜を作った姿勢が良くなるウォーキングシューズ)=1万2800円

■有吉弘行=有吉弘行ドリームディナーショー(太田プロ芸人含むフレンチ付きディナー賞)=2万円

■田山涼成=マップラス(アムロ・レイ、峰不二子の音声付きのワンセグ付きカーナビ)=3万9800円

■益若つばさ=女優ミラー(両サイドにLEDライトが付属した女性向け手鏡)=2800円~

■ギャル曽根=ギャル曽根グルメセット(ご飯に合う名産品のセット)=8800円

■オリエンタルラジオ=綾波レイ等身大フィギュア(エヴァの綾波レイの特注フィギュア)=43万円

 この番組の面白いのは、販売個数と売上金額をすべて公開するところ。優勝者はギャル曽根さんで、1回目に引き続き2度目の優勝。700万円を超える売り上げを叩きだしていました。そのほか100億の経済効果のあるカリスマモデル益若つばさも400万円近くの売り上げ。ファンの子たちにとって深夜に放映されるポシュレはなかなか接点のない時間帯ですが、益若つばさ自身が自分のブログでポシュレの放映時間を紹介して誘導するなど、影響力を生かした一人クロスメディア展開が功を奏した模様。

 そのほか、田山涼成のマップラスも400万円近くの売り上げ。島田紳助の解説がまた的を射ていて、「こういうのはプレゼンターが結局信用できそうかどうかや。かつらかぶっとらんやつは信用できる」といったコメント。半面、信用力のなさから最下位だったのは東MAXのヒーレスウォーカーで40万円前後の売り上げ。

 一方、オリエンタルラジオが紹介した1体42万円と最も高額な綾波レイの等身大フィギュアは2体を販売。深夜番組を見ながらぽんとお金を出せる人もいるんだなと思わせる販売実績です。

 この番組のプロデューサーの企画力は相当なものです。まず、深夜枠のテレビ通販番組「ポシュレ」を集約し、コンテンツ化している点。さらに、看板番組「行列のできる法律相談所」の冠をかぶせて、芸能人によるプレゼン能力を競わせるというエッセンスを盛り込み、これまで不透明だった販売個数や売上金額をオープンにしている点。そして、同放送においても再度、商品を販売している点(「行列のできる芸能人通販王決定戦」のページから有吉ディナー以外を購入できます)。

 テレビがつまらないという声が広がって久しいですが、こうした番組を見ると彼らの持つ企画力の底力は相当なモノだと感じます。例えば、サイバーエージェントが提供する「Ameblo」でも芸能人ブログを多数抱え、商品を記事中で紹介させることで収益化を狙うパッケージ(300~400万円)がありますが、あくまでメーカーと個人の芸能人ブログをつなぐだけ。視聴者や閲覧者に面白いと思わせる「コンテンツ化」を実現しているとは言い難い状況です。

 逆に番組のプロデューサーはこうした芸能人ブログで紹介された商品の売り上げがスゴイという点からヒントを得て企画したのかもしれません。ただ、「競わせたら面白いだろう」「不透明なところを逆にオープンにしてあげたら面白いだろう」といった数々の要素を加味し、コンテンツ化を実現しています。

 ほかのメディアから学べることはたくさんあります。

 例えば、いまとなっては当たり前となったニュース番組冒頭の「目次」。本日のラインナップはこちらという形で見せますが、これは雑誌から取り入れた要素です。このほか、みのもんたの「朝ズバ!」、「アッコにお任せ」など多くの番組で採用されている大型のボードに並べた見出し。これは恐らく、電車内のつり革広告からヒントを得て作ったものでしょう。テレビ局のプロデューサーやディレクターがどん欲に他のメディアを研究している証拠です。

 インターネットというメディアで働いたり関わる人々は往々にして「テレビ」「新聞」といった従来メディアに批判的な立場を取ります。もちろん既存メディアも大枠ではインターネットに対して敵対心(正確には恐怖心でしょうか)を持っているでしょう。ただ、いかに魅せるか、いかに面白いと思わせるかという点で、メディアはフラットな立場です。インターネットならではの面白さの演出があるでしょうし、テレビならではの面白さの伝え方もあるでしょう。お互いから学べることは多いと思っています。

 インターネットがあればテレビも新聞も雑誌もラジオも全部いらない。極論で正論かもしれませんが、選択肢がたくさんあることは普通に考えて実に刺激的なことです。少なくとも「ビジネス」としてインターネットに関わる人は、個人の好みはさておき、数多くのメディアに触れておくことが重要だと考えています。

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