エニグモが2009年10月8日に開始した「コルシカ」ですが、かなり早い決着を迎えました(関連:エニグモの「コルシカ」は暴走?確信犯?)。日本雑誌協会による反発に、エニグモ側が大幅にサービスを縮小させたことで、とりあえず一件落着です。
サービス開始翌日の10月9日、12時から緊急で日本雑誌協会によるエニグモのヒアリングが実施されました。ここに登場したのは須田将啓氏ではなく、同社で同じく代表取締役共同最高経営責任者をつとめる田中禎人氏。協議が重ねられた結果、日本雑誌協会とエニグモは以下の項目で合意しました。
・雑誌の販売要請がある出版社もあるため、コルシカはサービスとしては継続すること
・法律的な解釈の相違はあるものの、当要請と見解を真摯に受け止め、日本雑誌協会会員出版社の出版物の販売を一旦、中止すること
・今後、会員出版社と個別協議し、販売許諾を得られた出版物に関して販売すること
・日本雑誌協会の要請に基づき、共にデジタル分野での新しい雑誌の可能性を追求し、雑誌デジタルコンテンツ化推進への協力を模索すること
結果、エニグモの出版社一覧から日本雑誌協会に加盟している大手出版社の名前は消え、当初120社近くあった出版社が名を連ねるページからは60社近くまで減少しました。読める雑誌は30誌に減り、「ビジネス・マネー・経済」のカテゴリーには「宝島」の1誌のみ。読めるはずの雑誌も在庫切れの表示が多く、サービスとしては完全に魅力を失っています。
スピード決着が図られた今回の一件、サービス縮小を余儀なくされたエニグモもダメージが大きいでしょうが、一方で出版業界にとっても抱えていた問題が露見しました。
まず、エニグモとしても期待が外れた部分でしょうが、ユーザーによる歓迎の声がほとんどなかったこと。法律的にどうなのかという問題を別にして、便利なサービスには賞賛の声も一定数集まります。例えば、グーグルによるストリートビュー。プライバシー侵害という問題は抱えながらも、その利便性の高さ、サービスの面白さに多くのユーザーは夢中になりました。コルシカは利便性というよりも、著作権侵害に関する話題で沸騰した感があります。購入した雑誌がデジタル化され、スクラップでき、どこからでも読める。便利なはずのサービスに対して、歓迎の声が少なかったことは、ある意味、ユーザーによる雑誌離れが予想以上に進んでいることを顕著に表しているのではないでしょうか。これは雑誌のデジタル化事業を目指す雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムにとってある意味、衝撃的でしょう。デジタル化したからといってバラ色の未来が拓けるわけではないことが先に見えてしまったからです。
もう一つは、スピード感です。雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムが事業化を目指すとしているのは2011年。2年間の実証実験で記事ごとの少額課金システム、専用デバイスなどの研究を行うとしていますが、先週はアマゾンジャパンが日本でもKindleの販売を開始。急速に傾く出版業界にとって2年間はあまりにも悠長な時間。今年、来年とさらにいくつかの出版社は倒産するかもしれませんし、「雑誌」というメディアからはユーザーがどんどん離れていくでしょう。コルシカの是非はともかく、いま最も必要なのはスピード。権利処理はもちろん重要で、かつクリアにしなければならない問題ですが、エニグモのコルシカに対してサービスの継続を求める中小出版社がいることは見逃せません。著作権だの複製権だの悠長なことを言ってられない出版社の現状。これを浮き彫りにしただけでも、コルシカの価値は十分あるのかもしれません。
今後個別協議を行っていくとするエニグモ。プラットフォームは既にできあがっているのですから、少しでも収益拡大を望む出版社が契約を結ぶ可能性があるかもしれません。出版業界に広がるエニグモへの嫌悪感は当分続くでしょうけど。






■オンライン雑誌閲覧サイト「コルシカ」、一時サービス縮小へ- 逆の見方をすれば、実は素晴らしい販促になるかも?
こんにちは。このサイト初めて知ったとき、「素晴らしい!!、黒船の来航に匹敵する大変動!!」どうやって出版社のコンセンサスを得たのかと思い、それを知るためもあって早々登録してしまいしまた。しかし後で、必ずしもコンセンサスを得ていなかったと知り、多少がっかりしました。しかし、このサイトのやっていることは、先駆的で挑戦的だと思います。GoogleBooksも似たようなことで、全世界的に物議をかもしています。全出版物のデジタル化は時代の趨勢だと思います。印刷媒体主体の出版社側も、既得権益にばかりこだわらず、いずれ何らかの形で歩み寄ることが、生き残りの条件になってくると思います。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。
>yutakarlsonさん
コメントありがとうございます!早速ブログを拝見しました。
おっしゃるとおり、デジタル化は時代の趨勢でしょう。要は“誰がそれをやるのか?”というところに尽きると思います。日本雑誌協会もデジタル化を模索していますし。
ただ、とにかくスピードが遅い。コルシカが出版社をくどくのが先なのか、日本雑誌協会のデジタル化事業が加速するのか。いずれにせよ、ユーザーにとっては便利な世の中になるのは間違いないでしょうね。
残る問題は作り手側が大変になるということでしょうか。雑誌はアーカイブとして残されると、実は去年、一昨年の焼き直しみたいなことが多々見つかると思います。それもばれちゃいますから大変でしょうね。